グリーンフィールド・パピルスとは、古代エジプト中王国時代、紀元前950年から前930年頃に当時の女性神官のネシタネベトイシェルウのために作られた死者の書です。
現存する世界最長(全長約37m)の死者の書として有名です。
2012年に初来日した大英博物館のエジプト展では、室内で壁面を周回するように展示され、本展では最大の注目を集めました。
内容は、冥界の王オシリス神への礼拝をし、ミイラとなって墓に運ばれ、「口開けの儀式」で冥界の旅に備えます。
最初に地平線上の太陽神ラーを礼拝し、その後オシリスの館を目指す道中に行く手を阻む危険な動物たちを呪文で撃退し、館に着きます。
最後の審判でオシリス神に生前の正しい行いをしたことを証明し、審判した結果、楽園イアルの野に住むことを許され、永遠の生命を享受するというストーリーが描かれています。
※口開けの儀式…ミイラの口を開ける儀式のこと。冥界の旅先で必要な呪文を唱えたり、供え物(カーとバーという2つの精霊)を食べることができるようになります。
※大英博物館 古代エジプト展…森アーツセンターギャラリーにて、大英美術館が所蔵する約180点のエジプトコレクションが展示された展覧会。
2012年7月7日(土)~9月17日(月・祝)に開催されました。
※太陽神ラー…古代エジプト神話に登場し、太陽信仰の象徴とされる太陽神。ハヤブサの頭を持つ姿で描かれることが多いです。
※オシリス神…古代エジプト神話に登場する神の一柱。
エジプト神話によると、元々は生産の神でありエジプトの王として君臨していましたが、王位を狙う弟のセトによって謀殺され、ナイル川に沈められました。
その後、妻であり妹でもあるイシスとアヌビスによって、ミイラとして復活し、後の冥界の王として君臨します。
※真実の羽根…死者の魂を量るために、真実を司る女神マアトの天秤に吊るす羽根。別名はマアトの羽根。
※アメミット…死者を裁く古代エジプトより伝わる幻獣の一種。頭がワニ、たてがみと上半身がライオン、下半身がカバの3種類の動物が合体したような姿をしています。
天秤にかけられた真実の羽根よりも重かった場合、死者の心臓を貪り喰らいます。喰われた魂は、二度と転生できなくなり、永遠の破滅を意味します。
※楽園イアルの野… ナイル川のほとりの故郷に似た死者の楽園のこと。
極楽浄土の世界や天国とは趣が異なり、生前と同じように農業をしながら神々とともに生活を送ることができます。
※ネシタネベトイシェルウ…アメン大司祭のピネジェム2世と妻のネシコンスの間に生まれた娘であり、グリーンフィールド・パピルスの主人公。